8.世間一般の除霊治療の限界と、患者に対する現実の対処方法

単なる除霊では、憑依現象の根本解決はできない

憑依に対しては「除霊」というのが、心霊に関心のある人々の間では常識となっています。太古のシャーマニズムの時代から現代の新興宗教まで、憑依対策として除霊が行われてきました。確かに除霊によって一時的には憑依霊を取り除くことができるかもしれません。しかし憑依されている本人の心の持ち方・考え方が変わらないかぎり、またカルマが解消しないかぎり、霊はまたすぐに取り憑くようになります。

除霊に携わる祈祷師や霊能者や宗教者自身が、こうした事実を十分に認識していないために、全く無駄なことを繰り返すことになっています。除霊をしたからといって、実際には何も問題は解決されていないのです。除霊や浄霊の類で憑依現象が解決すると考えるなら、それは霊的事実に対する無知をさらけ出している以外の何物でもありません。除霊は、憑依現象に対する単なる“霊的な対症療法”にすぎないのです。

世間一般に行われている除霊・浄霊では、数週間、あるいは数日もしないうちに、再び以前と同じような現象が起こり始めます。そして家族も本人も、また絶望のどん底に突き落とされることになります。そこで別の祈祷師や霊能者を探し求めて、除霊・浄霊を繰り返すことになります。

しかし何度も述べましたように、本人のカルマが切れて心境が根本的に変わらないうちは、除霊や浄霊をどれだけしても同じ結果を招くだけなのです。一時的によくなったかのように感じられることがあっても長続きしません。過労や睡眠不足が続いたり、季節の変わり目に体調を崩したりすると、すぐに憑依現象がぶり返すことになります。その結果、ますます状態は悪化して、最後は精神病院に入院させざるをえなくなります。

自己努力のできない患者には、できるだけ早く現代医学の薬物療法を始めさせる

これまで述べてきたような自己努力のできる患者は、たとえ霊媒体質であっても深刻な憑依状態にまで至ることはありません。しかし実際には、自己努力のできる患者はきわめて少数に限られます。そこにはカルマの問題と霊性(霊的成長)の問題が絡んでいるからです。

大半の統合失調症患者の場合は、病気があまり進行しない初期のうちに病院に足を運び“薬物療法”を始めることが必要になります。薬物の助けを借りて病気の症状を緩和し、苦痛を和らげ、正常さを保たせる方向にもっていかなければなりません。統合失調症の治療薬は、継続して飲み続けることが必要です。自己判断でやめたりすると、病状を繰り返したり、再発することになります。薬の副作用は心配ですが、それ以上に統合失調症は一大事であると観念して、薬物療法を続けることが大切です。

手に負えないときには、直ちに病院に入院させる

憑依状態が深刻になると、自殺や失踪などを企て、生命に関わるような事態を招くことになります。家族や周りの人々の手に負えないときには、精神病院に入院させることが必要です。現代医学の助けを借りて、一刻も早く憑依された患者の心身を休ませなければなりません。

憑依が進行して狂乱状態になるときには、患者は何日間も不眠状態が続き、食事も喉を通らなくなっています。肉体と神経は衰弱の極に至っているのが普通です。それでも本人は、まるで疲労を感じないかのように駆け回り続けます。)一刻も早く入院させて睡眠をとらせ、大きく乱れた心身のバランスを取り戻させなければなりません。睡眠と食事が正常に戻り体力が回復するにともない、憑依による興奮状態は静まっていきます。

「病院に入れるのは世間体が悪い」とか「本人が嫌がって可哀想だ」などの理由で延ばし延ばしにしていると、症状はさらに悪化し、全く手に負えなくなってしまいます。取り敢えずは現代医学の力を借りて、急場をしのがなければなりません。現在では薬物療法が進んで、かなりの部分まで統合失調症をコントロールすることができるようになっています。薬物によって潜在意識→顕在意識のルートが制限されるために、外面的な症状が抑えられるものと思われます。変性意識化していた意識を“薬”が元に戻すということです。その間に「心の自然治癒力」が働き、徐々に回復に向かっていくようになります。)

いずれにしても治療薬によって統合失調症がコントロールできる、狂気の状態に対処できるということは、患者を抱えた家族にとって朗報です。とは言っても“薬物療法”は症状をコントロールするだけで、病気そのものを治すわけではありません。まず症状を抑えておいて、「心の自然治癒力」が働くのを待つということです。

この病気には「カルマ」が絡んでいることが多く、完治するまでに長い期間がかかったり、一生を病人として過ごすケースがきわめて多いということを覚悟しておかなければなりません。