11.心の病気に対するホリスティック(トータル的)な治療の必要性

“心の治療”の複雑さ・難しさ

心の病気(精神障害)の患者に対して、現実の治療はどのように進めていったらよいのでしょうか。“心の治療”には、さまざまな次元の治療手段を繰り出してトータル的に対処していかなければなりません。心の病気は、肉体の病気と違って治療の反応を確認しづらいことが多く、ある面では試行錯誤で進めていくことになります。

心の病気とは、すでに述べたように霊的エネルギー不足から生じる「心全体の不調和・アンバランス」のことです。心の深刻な「霊的エネルギー枯渇状態」のことです。したがって心の病気に対する治療法は、不足している「心のエネルギー(マインド・エネルギー)」を外部から直接補充するということになります。スピリチュアル・ヒーリングや心身医学・精神医学での心理療法は、そうしたエネルギー補充の方法となっています。

ただし“心理療法”のような水平レベルでのアプローチ(治療法)では、「心」の表面だけを改善し症状を緩和する単なる“対症療法”にとどまり、それほど効果を上げることはできません。上位の「霊」からのアプローチでないかぎり、心の正常化を図ることはできません。ここに“心の治療”の複雑さ・難しさがあります。

まずは休息を与える

心の病気では、どのようなケースでも、発病後一定期間は「徹底した休息」を与えることが必要です。休息によって心に少しずつエネルギーが蓄えられるようになり、「心の自然治癒力」が働くようになります。心の病気にとって“休息”は、とても効果的な治療法なのです。

精神科の助けを借りる

病気の発症時には、徹底して休息を与えると同時に精神科に行って“薬物治療”を始めることが必要です。薬物治療はどこまでも“対症療法”ですが、現在では副作用の少ないかなり良い薬が開発されています。それなりの効き目心の苦しみを緩和すること)を期待することができます。

また、少し落ち着いてきた時点で“心理療法”を並行して進めるようにします。心理療法は精神科の医師やカウンセラーによって行われることになりますが、現時点では本当に優れた医師やカウンセラーに出会うことは難しいのが実情です。

スピリチュアル・ヒーリングを受けてみる

こうした現代の精神医学による治療を受ける一方で、「スピリチュアル・ヒーリング」によって「霊的エネルギー」を注入し、心の傷を癒すようにします。それがスピリチュアル・ヒーリングの役割です。人によってはスピリチュアル・ヒーリングを受けることで、著しい回復を見せる場合もあります。

周りからのサポート

心の病気は普通、自然治癒力の働きによって時間の経過とともに少しずつ回復していきます。言うまでもないことですが回復過程では、周りの人々の上手な対応やサポートが、きわめて大切です。

上手な対応とは、“親切や優しさだけで接しない”ということです。温かく見守り支えてあげることは必要ですが、安易な親切や優しさでは病気は治せません。それは相手のさらなる依存心を引き出し、期待と甘えばかりをふくらませることになります。その結果、周りの人々も疲れ果て、共倒れするといった事態を招きかねません。患者は、不満や不安・苦しさを延々と訴えるのが普通です。その声に周りが巻き込まれ振り回されるなら、支えるどころかいっそう事態を悪化させることになってしまいます。

周りの人々の正しい対応とは、どこまでも「本人の自立」という方向に向けたものでなければなりません。親切や優しさだけで接すれば患者は喜ぶし、付き合う方としてもその時は楽ですが、それでは患者の「自己努力」を促すことはできません。我儘わがままや不満を増幅させ、現実逃避に手を貸すことになってしまいます。

もう1つ、しっかりと知っておかなければならないことは、心の病気はいったん回復したかに見えても、同様のストレスやトラブルによって簡単に再発する可能性が高いということです。一度、心に傷をつくってしまうと、それが癒えても少しの圧力でまた容易に破れてしまうのです。そこで患者自身が防衛力をつける必要性が出てきます。再発を防ぐためには「本人の心が変わる」ということが、一番重要な要素となってくるのです。

患者自身が心を変える努力をする

心の病気の再発を防ぐためには、患者本人が心を強くし“ストレス”をつくらないようにしなければなりません。そのためにはこれまでの考え方や判断の仕方を変えることが必要となります。「考え方を変える」という方向に向けての治療は、心理療法の1つである認知療法などでも行われています。

しかし考え方を根本的に変化させるためには、「人生観・価値観」というレベルにまで掘り下げてアプローチしなければなりません。そうでないかぎり「心の変革」は徹底できません。信仰をするようになって、それまでの“心のやまい”を克服したという患者の話をたびたび耳にしますが、それは信仰によって、より積極的に自分の考え方を変えることができるようになったからです。もっとも何を信仰するのか、どのような信仰をするのかによって、後になって別の問題を生むこともありますが……

心の病気の治療は、患者が「自分の努力で、自分の心の持ち方・考え方を変える」という段階にまで行き着かなければ完治しません。心の治療は、最終的にはこうした「自己努力」を中心としたレベルにまで至らなければなりません。本人自身が「これまでの考え方を変えて自分で心の病気を治そう!」と決心しなければ、外部からどのような対策を講じても根本的には解決しないのです。

本来“カウンセリング”は、それをさせるためにあるのです。カウンセリングによって本人の心に「自己努力の決意」が目覚めたとき、初めて本質的な心の病気の治療がスタートします。またすでに述べたように利他愛の実践・無償の奉仕活動は、心を深いところから変化させ、純粋な喜びをもたらします。「利他愛の実践」は、心の病気の最高の治療法なのです。

食生活改善などの「肉体管理」をしっかり行う

肉体は心の影響を受けると同時に、心の健康状態にも影響を与えます。肉体が疲れ過ぎていたり痛みがあれば、否応なく心は暗くなってしまいます。運動不足が続くと気分が冴えなくなります。心と肉体は、こうした相互関係を持っています。これは心の病気に対して、肉体次元からのアプローチがそれなりの効果を発揮するということを意味します。

その肉体管理ですが、具体的には――「正しい食生活」「適度な運動」「十分な休養」ということになります。これらを実践することは、心の病気治療としても欠かせません。

特に現代型の「間違った食生活」は、ドラッグやタバコ、アルコール並みのダメージを“脳”に直接与えることになります。「心(顕在意識)」は、高次意識の一部と脳によってつくり出される本能的意識(肉体意識)がひとつになったものです。脳のダメージは、当然「心(顕在意識)」に異常を生み出し、さまざまな「心の病気(精神障害)」を発生させることになります。現代人の間違った食生活は、薬物やアルコールに匹敵する精神障害の要因となるのです。

食事改善や運動は、肉体を健康に保つための努力であり、それはそのまま心の病気治療の一部分になっています。