5.スピリチュアル・ヒーリングの受容についての問題
困難な「霊」の受け入れ
ホリスティック医学は今後、スピリチュアル・ヒーリングの治療理論を取り入れて総合医学の理論化の試みに着手すべきです。その際、最大の問題となるのが「霊の存在」についてであることは言うまでもありません。「霊」は現代人にとって、特に現代科学の方法論になじんできた人々にとっては最も受け入れがたい概念であり、できることなら関わりを持ちたくないと思っている人々が大勢います。そうした中で、霊界の医者(霊医)が治療をして病気を治すなどという話を受け入れることは、きわめて困難です。
スピリチュアル・ヒーリングを理解しようとすることは、一般の人々にとってたいへんな混乱と面倒、時には反対に遭遇することを意味します。霊界とか霊の存在を知らなかった人々が、スピリチュアル・ヒーリングを受け入れるについては、新しい宗教や信仰を始めるのと等しい意識転換が要求されることになります。
しかしスピリチュアル・ヒーリングの正しい理解は、「霊」に対する認識なくしては不可能なのです。
「信じるか、信じないか」の問題
「霊の存在」については、最終的には「信じるか、信じないか」という1人1人の心の問題に帰着します。したがってスピリチュアル・ヒーリングは、霊の存在を受け入れる人々によってのみ認められるということになります。現代科学に携わってきた人々は霊の存在を否定する傾向にありますが、それは確たる根拠があってのことではなく、「信じられない」というたった1つの理由があるにすぎません。
霊の存在を受け入れることは科学的な態度と矛盾しないということ、科学者や医学関係者が霊の存在を信じたとしてもおかしくないということは、本書ですでに述べた通りです。しかし現実には“霊の実在を信じることは非科学的である”という偏見が、根強く人々の心を支配しています。
“見ても見えず”
検証の限界
スピリチュアル・ヒーリングの受容は、「霊の存在を認めるかどうか」という一点にかかっています。そのためにスピリチュアル・ヒーリングは、これまで現代医学による検証を歓迎してきたのです。そしてこれからも喜んで検証台に立とうとしています。
とは言っても“見ても見えず”の譬えのように、実際の治癒の結果を見ても、なかなかその事実を認めようとしない人間がいるものです。何かと理由をつけて否定しようとしたり、科学と矛盾するという訳の分からない理由をつけて避けようとします。科学的に説明できるかどうかではなく、事実かどうかを自らの目で確かめて判断すべきなのですが、そうした当たり前のことが、先入観と偏見によってできなくなってしまうのです。
スピリチュアル・ヒーリングに対する検証には、常にこうした人間くさい問題が付きまとうために、ヒーラーサイドがいかに公正な検証に応じる姿勢をとり続けても、限界があります。結局、スピリチュアル・ヒーリングをめぐっては今後も、これを信じる人と信じない人に二分化されたまま推移していくことになると思われます。