5.治療形式の違う、他の「スピリット・ヒーリング」
スピリット・ヒーリングの最も一般的な治療形式は、患者の身体への手かざしや、軽いボディー・タッチです。ところが同じスピリット・ヒーリングに属しながらも、全く治療形式の異なるものがあります。霊界の医師が主役となって治療を進める点は同じなのですが、その治療方法が、これまで取り上げてきた一般的なものとは全く違っているのです。
ここではそうした特殊なスピリット・ヒーリングの中から、「心霊手術」「遠隔治療」「除霊治療」という3つのケースを取り上げます。
心霊手術
フィリピンやブラジルで行われている「心霊手術」は、その驚異的な治療方法によって世界中に知られることになりました。
例えばブラジルの心霊手術師として有名だった人物はホセ・アリーゴ(*1971年、交通事故死)ですが、彼の心霊手術には、1918年に死んだドイツ人医師フリッツの霊が関わっていたことが知られています。
心霊手術は、霊界の医者たちが「霊的エネルギー」を操作することによって可能となります。詳しい心霊手術のメカニズムは明らかにされていませんが、患者の霊体と肉体を結ぶ結合体(中間体)の異常部分を、霊的エネルギーによって取り除くと言われています。患部はヒーラーによって体外に取り出されることもあり、これは“エクトプラズム”が物質化したものと考えられています。
心霊手術の治療形式は、これまで見てきた一般的なスピリット・ヒーリングとは異なりますが、そこで用いられる治療エネルギーは、すべて霊界の医者による「霊的エネルギー」です。この意味で「心霊手術」は、スピリット・ヒーリングの1つと言えます。
スピリチュアリズムでは、こうした見た目に派手なスピリット・ヒーリングは、霊性の低い地域の人々に向けての“デモンストレーション”としての意味合いがあるとしています。心霊手術は、高い霊的意識を持てない人々に強烈な印象を与えて霊的世界に関心を向けさせるために、霊界サイドが意図的に仕組んだものなのです。人々の霊性と霊的世界に対する理解が進むにつれ、心霊手術のような派手なパフォーマンスは不必要となり、本書で取り上げたような一般的なスピリット・ヒーリングの形式に移行していきます。
遠隔治療
一般的にスピリチュアル・ヒーリングは、ヒーラーが患者を前にして直接進められます。ところが患者が遠く離れた場所にいる場合でも、スピリチュアル・ヒーリングが行われ、病気が癒されることがあります。これを「遠隔治療(アブセント・ヒーリング)」と言います。何百キロも離れた所にいる患者の治療ができるということは常識では考えられませんが、現実に数多くの患者がこの遠隔治療で癒されています。
遠隔治療には、さらにもう1つの驚くべき内容があります。それは「ヒーラーと患者は一面識がなくても治療が成立する」ということです。患者の知人や家族からの依頼によって患者本人が知らないうちに遠隔治療が行われ、病気が癒されるというようなことが実際に生じるのです。
こうした事実は「スピリチュアル・ヒーリング」が、まさしく物質次元に限定されないところで行われている治療であることを示しています。それと同時に、信仰治療などでたびたび見られるプラシーボなどの心理的要因とは全く無関係な治療であることの証明となっています。
世間一般でもよく知られている“テレパシー”は、遠く離れた場所にいる人間に思考内容が伝わるという現象ですが、霊的次元の世界ではそれが当たり前の伝達手段になっています。「遠隔治療」も、このテレパシーと同じようなメカニズムで行われます。地上のヒーラーが遠方にいる患者に向けて思念を発射すると、患者とヒーラーの間に霊的通路がつくられ、この通路を経てエネルギーが伝達されるようになります。
その際、伝達される治療エネルギーには2種類あります。1つはヒーラー自身から発せられる「霊体エネルギー(サイキック・エネルギー)」であり、もう1つは霊界の医者からの「霊的エネルギー(スピリット・エネルギー)」です。後者のケースでは、霊医から発せられたエネルギーがヒーラーを介した後に、ヒーラーの送り出すサイキック・エネルギーとひとつになって(*サイキック・エネルギーを乗り物として)遠方の人間に伝達されるのです。
したがって遠隔治療にも、「スピリット・ヒーリング」と「サイキック・ヒーリング」という2つのケースが存在することになります。治療効果は、スピリット・ヒーリングの方が比較にならないほど高いことは言うまでもありません。
除霊治療
霊の憑依によって、ある種の精神病が引き起こされることが知られています。そして憑依した霊を取り除き病気を治療することが、古来より多くの宗教やシャーマニズムで行われてきました。これを「除霊治療(*浄霊治療と呼ばれることもある)」と言います。歴史的には、イエスの除霊治療が最もよく知られていますが、21世紀の現在でも、世界の各地でこうした除霊治療が行われています。先進国である日本でも、除霊治療は新興宗教を中心に活発に行われています。
除霊治療では普通、ヒーラーが患者に手をかざしたり、患者の体に触れてエネルギーを送り込み、憑依霊に衝撃を与えて患者から離れさせます。また別の霊媒にいったん憑依霊を乗り移らせ、霊を説得して患者から離れさせるというような方法が取られることもあります。それによって憑依霊が患者から離れると、その瞬間に精神病は治ります。
こうした除霊治療は、ヒーラーが自分の「霊体エネルギー(サイキック・エネルギー)」を用いるのか、それとも霊界の医者の「霊的エネルギー(スピリット・エネルギー)」を用いるのかによって2つのケースに分類されます。霊界の医者が主役となって除霊治療を行う場合は「スピリット・ヒーリング」となり、ヒーラーが自分の霊体エネルギーを用いて行う場合は「サイキック・ヒーリング」ということになります。言うまでもなく「スピリット・ヒーリング」であってこそ、大きな治療効果を上げることができます。
憑依による精神病の原因の多くは、患者自身の「カルマ」と「霊性の未熟さ」です。こうした原因を取り除かないかぎり、憑依現象の根本解決は望めません。霊医による「スピリット・ヒーリング」では、患者に内在するさまざまな霊的原因を解決する方向に働きかけがなされます。さらに霊界サイドから“憑依霊”に対してのアフターケアが引き続き行われるようになるため、いったん治療が成功すれば、憑依が再発するようなことはめったにありません。
これに対し「サイキック・ヒーリング」の場合は、一時的に憑依霊は取り除かれるものの、憑依の原因となった患者の諸要因はそのまま残されているため、憑依を再発させることになります。日本の新興宗教に見られる除霊治療は、そのほとんどがサイキックレベルのものであり、いったん病気が良くなっても、再び病状を悪化させています。シャーマニズムの“呪術治療”も、大半がサイキックレベルの除霊治療です。また密教などでの“加持祈祷”による治療も、同じくサイキックレベルの除霊治療です。
スピリチュアリズムの歴史の中で最も有名な「除霊治療」は、アメリカの精神科医師、カール・ウィックランドによって行われたもので、「スピリット・ヒーリング」としての除霊治療が最も成功した例と言えます。ウィックランド博士は、霊界の医師たちと協力して30年もの間、多くの精神病患者の治療に当たり、驚異的な治癒率を上げることになりました(注1)。(*「除霊治療」については本書の第7章で改めて取り上げ、詳しく述べることにします。)