1.「ホリスティック医学」の治療理念
“自然治癒力が病気を治す”
日本ホリスティック医学協会が掲げたホリスティック医学の理念の中に、「自然治癒力を癒しの原点におく」という項目があります。ホリスティック医学の治療観は、この“自然治癒力が病気を治す”という一文に集約されます。ところが自然治癒力という概念は、現代医学の中では正式に承認されてはいません。“自然治癒力”は、病気を癒す身体の働き・力と考えられますから、“Natural Healing Power”といった訳語が与えられることになりますが、それも無理やり当てはめたものであって、正式な辞書に載っているわけではありません。
宗教的な表現を用いるならば、自然治癒力は「身体の病気を治すために神が与えてくださった力」ということになります。古いことわざに「病気は神が治し……」という一節がありますが、その意味するものはこの自然治癒力に他なりません。身体には、人知を超えた高度な知性的働きがあり、それによって生命活動が営まれています。「ホメオスターシス」や「免疫システム」は、まさに身体の知性的働きと言えます。
身体に対する認識が深まれば深まるほど、こうした身体の持つ高度な知性的機能に驚嘆せざるをえなくなります(注1)。病気や怪我が治癒していく様子は、人知を超えたシステムによる“奇跡の業”と思えるようになります。今世紀最大のスピリチュアル・ヒーラーと言われたハリー・エドワーズは、身体に備わっている精妙な仕組みを――「身体の英知(Body Intelligence)」という用語で呼んでいます(注2)。
ホリスティック医学では、「自然治癒力を高め増強すること」を治療の基本とします。身体にもともと備わっている癒しの力を高めることによって、病気は治ると考えます。では、どうしたら自然治癒力を増強することができるかということになりますが、ホリスティック医学では、それを食事・運動・休養などに求めたり、生きがいやプラスのイメージなどの心理的要因から考えようとします。