2.スピリチュアル・ヒーリングの「霊的エネルギー循環システム」と健康観
スピリチュアル・ヒーリングにおける身体構成要素
スピリチュアル・ヒーリングの健康観と健康理論を述べる前に、予備知識として人間の構成要素について見ておくことにします。
第2章では、人間が「霊体」と「肉体」の2つの身体から成り立っていることを述べました。そして、その2つの身体の間に「中間体(幽質結合体)」があることを明らかにしました。しかし、人間の構成要素はこれだけではありません。
〈5つの構成要素〉
人間は死んで肉体を脱ぎ去った後は、霊体だけの存在となって新たな人生を出発することになりますが、その際、地上時代と同じような思考活動・知的活動を引き続き行います。霊媒現象などで、すでに他界した故人が生前の記憶と知性を携えて出現し、地上の知人や子孫と会話をするという霊的事実は、人間は死によって肉体を失った後も、心や知性を持って意識活動をしていることを示しています。すなわち死後の霊体にも、「心(意識)」がともなっているということなのです。
この「霊の心(霊的意識)」は、最も高次の要素である「霊」の進化(成長)レベルによって、その内容が決定されます。霊的成長の進んだ「ハイレベルの霊」は高次の霊的意識を持ち、「霊的成長の遅れた霊」は低級な霊的意識を持つようになるのです。
また肉体には、動物に見られるような本能的な心(意識)と低次元の知性も存在します。この本能的意識と知性によって、人間は肉体の維持と種族の維持を図ることができるようになっています。
人間は、霊的要素として「霊」と「霊の心(霊的意識)」と「霊体」を、物質的要素として「肉体の心(本能)」と「肉体」を有しています。私たち地上人は、まさに霊界にいる天使と物質界にいる動物を合体させたような存在と言えます。これらの5つの構成要素のトータルが私たち人間なのです。
以上の内容を図示すると次のようになります。
〈5つの構成要素の秩序と上下関係――「霊優位・霊主肉従」の関係〉
人間は、霊・霊の心・霊体・本能・肉体の5つの構成要素から成り立っていますが、これらの中で一番の大もと、すなわち人間自我の核(本我・真我)が「霊」であることは言うまでもありません。「霊の心」は、この「霊」の表現体あるいは道具・外皮に譬えることができます。同様に「霊体」は、「霊の心(霊的意識)」の表現器官・道具・外皮と言えます。霊的意識によって霊体の状態が変化したり、霊の心の命令によって霊体はさまざまな行動をとることになるからです。本能と肉体の関係もこれと同じで、本能が主人で肉体が従者・道具のようなものです。
ここでもう1つの重要な点は、霊・霊の心・霊体の3つの「霊的要素」は本来、本能・肉体という2つの「物質的要素」に対して上位にあるということです。すなわち霊的意識は本能より上位に、霊体は肉体より上位にあるということなのです。これが5つの構成要素における正しい秩序・関係です。
これを「霊優位」「霊主肉従」の関係と言い、図示すると次のようになります。矢印の向きが上下関係を示します。
〈5つの構成要素の分類法〉
●人間の5つの構成要素に対し、さまざまな分類法が考えられます。最もよく用いられるのが、「霊-心(意識)-身体」の三分法です。この場合の「心」とは、霊的心(霊的意識)と肉的心(本能)の2つをひとまとめにしたものであり、「身体」とは、霊体と肉体の2つをひとまとめにしたものです。
●「霊-霊的要素-肉的要素」という三分法も用いられることがあります。霊的要素とは、霊的心と霊体をひとまとめにしたもの、肉的要素とは、本能と肉体をひとまとめにしたものです。
●無形要素と有形要素の2つに分類する方法もよく行われます。形態を持たない要素が無形要素ですが、霊と2つの意識(霊的意識と本能)がこれに当たります。無形要素は意識レベルの内容によって、本能のような低次元のものから、霊という最高次元に至るグラデーション的段階があります。有形要素は霊体と肉体の2つの身体のことです。
以上で、人間を構成する要素が明らかになりました。こうした知識を前提として、次にスピリチュアル・ヒーリングの健康観について見ていきます。
スピリチュアル・ヒーリングの“健康の定義”
スピリチュアル・ヒーリングでは、健康と病気をどのように定義しているのでしょうか。どのような状態のときに健康であり、病気であると考えているのでしょうか。スピリチュアル・ヒーリングでは――「人間を構成する要素(霊・霊の心・霊体・本能・肉体)が全体的にバランスがとれているとき、人間は神と宇宙の摂理に一致し、本来あるべき最も自然な調和状態を維持し、健康を保つことができる」とします。これがスピリチュアル・ヒーリングにおける“健康の定義”です。
では、これらの5つの構成要素のバランス状態・調和状態は、どのようにして達成されることになるのでしょうか。
霊的エネルギーのステップダウンと、「霊的エネルギー循環システム」
「霊」は人間の本体我・真の自我であり、人間の構成要素の最も高次の部分です。宇宙に充満する霊的エネルギーが「霊」に取り込まれると、「霊」は霊的エネルギーによって充電され活性化されるようになります。次に、その霊的エネルギーは下位の構成要素である「霊の心(霊的意識)」や「霊体」に流れ込み、それらのエネルギーレベルをアップさせることになります。さらに霊的エネルギーは「本能」「肉体」へとステップダウンし、肉体次元のエネルギーレベルをアップさせ、活性化させます。
このようにして「霊」から取り入れられた霊的エネルギーは、霊の心(霊的意識)・霊体・本能・肉体へとステップダウンしながら人体のすべてに行きわたり、人間の各構成要素を満たすことになります。こうした一連の霊的エネルギーの流れを本書では――「霊的エネルギー循環システム」と呼ぶことにします。
図の矢印は、霊的エネルギーの流れの方向を示しています。この図には太くて長い矢印と、細くて短い矢印の2つがありますが、上位要素→下位要素へのエネルギーの流れはいずれも太く長くなっていて、主流であることを示しています。それに対しわずかですが、下位要素→上位要素への逆のエネルギーの流れもあります。身体内のエネルギーの流れは双方向性(バイラテラル)となっており、それぞれの構成要素の間に相互性があるということを意味しています。
例えば、霊的エネルギーは霊体から肉体へ流れる一方、肉体から霊体に向けて流れるエネルギーもあります。しかし、常に霊体からのエネルギーの流れの方が大きくなければなりません。そうしたときに両者のバランスがとれ、宇宙・自然と調和状態に置かれることになります。反対に肉体から霊体に流れるエネルギーが多いとき、両者のバランスは崩れ、霊体と肉体がともに不自然な状態に置かれ、異常が発生するようになります。
「霊的エネルギー循環システム」と健康状態
霊的エネルギーが身体の隅々にまで行きわたることによって、身体全体が調和状態に置かれることになります。人体を構成する5つの要素のバランス・調和は、このようにして達成されます。霊的エネルギーのステップダウンが正常に行われるならば、言い換えれば「霊的エネルギー循環システム」が正常に作動するならば、肉体は最も自然に合致した状態を維持できるようになり、肉体の健康維持のために神が与えてくれたさまざまなシステム(ホメオスターシス・免疫システム・自然治癒システム)が健全に機能するようになるのです。
人間の健康は、このように「霊的エネルギー循環システム」をキーワードにして、ホリスティックに説明されます。以上が、スピリチュアル・ヒーリングの健康観の核心部分です。