本章(第2章)のまとめとキーポイント
スピリチュアル・ヒーリングと唯物主義的な現代西洋医学との根本的な違いは、身体観にあります。スピリチュアル・ヒーリングでは「霊体」という霊的存在を人体の構成要素と考え、唯物的な現代西洋医学と真っ向から対立します。
本来ホリスティック医学は、霊性・精神性・身体性の3次元の要素をトータル的に考慮し扱うところに初めて成立するものです。これまでの代替医学には、心身医学のような精神レベルを包括するものはありましたが、霊的要素を取り入れたものはほとんどありませんでした。「霊的なるもの」は、これまでのホリスティック医学の中では手つかずの状況に置かれていました。
そうした中で、スピリチュアル・ヒーリングは「霊体」の実在を明らかにすることによって、ホリスティック医学に明確な霊的概念を示しています。
スピリチュアル・ヒーリングにおける身体観の基本は、霊体と肉体という2つの身体が重複して人体を構成しているというものです。その霊体は、霊という自我の進化・成長に応じてグラデーション的に変化することになります。霊的に成長すればするほど、霊体は精妙なものへと変化していきます。
スピリチュアル・ヒーリングの霊体・肉体の二重構造論は、スピリチュアル・ヒーリングだけの独自の身体論ではなく、従来の多くの宗教・思想にも見られ、また近年急激に注目を浴びるようになった臨死研究でも、同様の見解が示されています。
現在、数多くある代替医学の中で最もスピリチュアル・ヒーリングの身体観に近いのが、インド伝統医学である「ヨーガ」です。ヨーガは、肉体以外の不可視の身体の存在を認めます。
その不可視の身体は、スピリチュアル・ヒーリングで言う霊体に近いものですが、ヨーガの身体観がスピリチュアル・ヒーリングと違っているのは、不可視の身体が2つあるとしている点です。
インドの伝統的な身体論を土台にして、壮大な西洋神秘主義として理論体系化を図ったのがブラヴァッキーの「神智学」です。神智学では、人体は1つの肉体と複数の不可視の身体から構成されるとします。神智学は、宇宙論(コスモロジー)と身体観を大きなスケールで合体させた教義(ドクトリン)と言えますが、そこには根本的な論理的矛盾が存在します。
スピリチュアル・ヒーリングでは、1つの霊体がグラデーション的変化をすることによって、グラデーション的な階層世界に適応することができるとします。スピリチュアル・ヒーリングの身体観の合理性・論理性と比べると、人工的に創作された神智学の身体観の間違いは明白になります。
神智学の身体観を自らの医学理論の土台とし、それに現代科学や医学の知識を導入して新たなホリスティック医学のモデル確立に意欲的に取り組んだのが、リチャード・ガーバーでした。その彼が新しい総合医学モデルとして提示したものが「バイブレーショナル・メディスン」です。
バイブレーショナル・メディスンは、ホリスティック医学の理論体系化のパイオニアとして、大きな評価を受けるべきものです。しかし、その内容については根本的な問題点があり、手放しで評価することはできません。それは、神智学という間違った身体観を土台としてその上に築かれた理論であるからです。結論を言えば、バイブレーショナル・メディスンは空論に他なりません。
インド伝統医学と並んで、ホリスティック医学の代表格とされるのが中国伝統医学です。中国伝統医学は「気の医学」と言われ、気の一元論によって医学の理論化がなされています。気の医学では、機能が重視され、架空の「気の身体像」が考えられています。気の身体は、スピリチュアル・ヒーリングとは異なる独自の身体です。
その気の身体の所在が問題となりますが、最近の科学者による気の研究によって、物質・半物質次元にあることが推測されるようになりました。気の身体は、スピリチュアル・ヒーリングで言う「霊体」とは全く異なる存在であると思われます。「気の身体」はどこまでも物質・半物質次元の架空の身体であり、「霊体」と一致するものではないことが明らかになりました。