4.スピリチュアリズムとスピリチュアル・ヒーリングの関係
近代スピリチュアリズムとスピリチュアル・ヒーリングは、一体不可分の関係
スピリチュアル・ヒーリングにはさまざまなバリエーションがありますが、その中で最も一般的に見られる形式は、ハリー・エドワーズのように、ヒーラーが静かに患者の身体の一部に軽く手を触れたり、手をかざすといったものです。心霊手術などの一部のヒーリングを除いては、こうした方式が最も多く見受けられます。気功治療や信仰治療ではとかく派手な、時にはおどろおどろしいパフォーマンスがともなっていますが、スピリチュアル・ヒーリングはそうしたパフォーマンスとは無縁です。シンプルな治療形式の中に、スピリチュアル・ヒーリングの本質的な霊的要素が内在しています。
そのスピリチュアル・ヒーリングは、近代スピリチュアリズムの「霊魂観」と「身体観」を土台としています。すなわち人間は――「霊体-肉体という二重構造の存在である」「死後は霊的身体によって生き続ける」「肉体を持たない人霊は霊媒を通じて地上人と交流することができる」という3つのテーゼを大前提としているということです。これらについては以下の本文で詳しく取り上げますので、ここでは、スピリチュアリズムとスピリチュアル・ヒーリングが不可分の関係にあることを確認しておくにとどめます。
スピリチュアリズムの存在を抜きにして、スピリチュアル・ヒーリングを論じることはできません。現にハリー・エドワーズもウィックランドも、熱心なスピリチュアリストであったことがよく知られています。またハリー・エドワーズ同様、英国の著名なヒーラーであったパリッシュやテスターも、皆熱心なスピリチュアリストでした。そして現在、スピリチュアル・ヒーラーを自認する大半の人々も、何らかの形でスピリチュアリズムとの関わりを持っていることを明らかにしています。
スピリチュアル・ヒーリングの医学治療理論
スピリチュアル・ヒーリングの医学治療理論は、スピリチュアリズムによってもたらされた霊的真理・霊的思想から導き出されます。スピリチュアリズムの基本的理念を土台とし、そこにヒーリング的要素・医学的要素をプラスしたものが、スピリチュアル・ヒーリングの医学治療理論になります。
そのスピリチュアル・ヒーリングの医学治療理論は、具体的には次のようなものです。
- ①霊的身体を含む身体観と、「霊的エネルギー循環システム」
- ②「霊的エネルギー循環理論」――ホリスティック健康論・病因論・治療論
- ③「治療領域理論」――霊的エネルギー循環理論に基づく治療効果論
- ④「治療エネルギー理論」――スピリチュアル・ヒーラーの使用エネルギー論、スピリチュアル・ヒーリング分類論
- ⑤「スピリチュアル・ヒーラー理論」――スピリット・ヒーリング成立論
スピリチュアル・ヒーリングの本質は、これらの理論によって理解されるようになります。そのいずれもが「霊的なるもの」を中心としています。これは、まさにスピリチュアル・ヒーリングが霊的要素を集大成した医学であることを示しています。
本書の以下の章では、これらのスピリチュアル・ヒーリングの医学治療理論を1つずつ取り上げ、他の治療法と比較検討して、スピリチュアル・ヒーリングの霊的特性を明らかにしていくことにします。