3.スピリチュアル・ヒーリングと現代科学の対立
スピリチュアル・ヒーリングにおけるインチキの問題
一般的に言ってスピリチュアル・ヒーリングは、多くの人々から敬遠されがちです。日本やアメリカなどでは、スピリチュアル・ヒーリングはとかく“インチキ”の代名詞のように思われてきました。実際これまでのスピリチュアル・ヒーリングには、あまりにも多くの不正がつきまとっていました。スピリチュアル・ヒーリングを利用した悪質な商売が横行し、それによって大勢の人々に苦しみを与えるというような事実がありました。誠実で良心的なヒーラーは少数派で、インチキを行うヒーラーが常に圧倒的に多数を占めていました。
こうした状況がスピリチュアル・ヒーリングに対する信頼を失わせ、スピリチュアル・ヒーリングの権威を地に
科学と宗教の住み分け
一方、それとは別の理由でスピリチュアル・ヒーリングは、現代科学や西洋医学から敬遠されてきました。現代科学や医学によれば、スピリチュアル・ヒーリングによる治療などはあり得ないことになっています。科学的方法に一致しない、科学的説明ができないということがその理由です。
しかし科学とは、そもそも物質世界における法則性を明らかにすることを目的とした手続き・方法論であり、「霊」といった物質でない存在は、初めから自分たちの研究対象から除外しています。いわゆる「科学と宗教の住み分け」ですが、その原則を科学者自らが忘れ、科学で説明できないものは事実でないと錯覚するようになってしまっているのです。科学は物質世界における法則性(真実)を説明するための1つの方法にすぎないのであり、その意味で科学は、霊魂の存在や霊界の存在といった問題について口出しする権利はありません。霊魂は物質ではなく、初めから科学の対象から外している(
科学という物差しのみが正しさを証明するという立場に固執するならば、スピリチュアル・ヒーリングなどは当然、真実ではないことになってしまいます。物質世界という限定された狭い範囲を範疇とする科学では、もとより限界があるというだけなのに、それさえも分からなくなってしまっているのです。科学、科学と言いながら、「科学と宗教の住み分け」という科学の大前提を忘れてしまっています。
「事実こそが真実」という方法論
科学的証明ができなくても真実の可能性があるものは当然存在します。スピリチュアル・ヒーリングは、まさにそうしたものの代表格です。科学的再現はできなくても、現実にはスピリチュアル・ヒーリングによって多くの患者が癒されています。批判的な医者たちを証人とした公開デモンストレーションの席で、スピリチュアル・ヒーリングは現代医学に見放された人々を実際に癒してきました。インチキや錯覚の可能性を厳格に排除した状況下で、スピリチュアル・ヒーリングは現実に病人を治してきました。
こうした事実は、科学的説明が真実性の根拠となるのか、それとも現実の治癒という結果が真実性の根拠となるのかという根本問題を人類の前に提示することになります。言うまでもなく普通の知性を持った人間ならば、「事実こそ真実」と考えるはずです。
いずれにしても「事実こそが真実」という誰もが納得できる方法論こそが優先されるべきです。事実かどうかをひたすら検証すればよいのです。これまで、ハリー・エドワーズをはじめとする多くのヒーラーたちは、自分たちの治療のすべてを現代医学の医者たちに公開してきました(注6)。そして彼らの検証を常に歓迎してきました。いつでも検証に応じる態度をとり続けてきたのです。こうしたフェアな姿勢を一貫して示し続けてきたために、スピリチュアル・ヒーリングは、現代イギリス社会の中に受け入れられるようになったのです。
スピリチュアル・ヒーリングをめぐるエビデンスの問題
最新の科学的研究による、スピリチュアル・ヒーリングの効果の検証
最近アメリカを中心に、民間療法や代替医療・ハーブ・栄養素に対して、人間を対象とした大規模で厳密な臨床調査(無作為割付・二重盲検)が進められるようになってきました。細胞レベルでの実験や動物実験を越えた、これまでにない厳格な科学的実証性(エビデンス)を明らかにしようという動きが盛んになっています。こうした臨床調査によって、従来は有益とされてきた多くの民間療法や代替医療の有効性が疑われるようになっています。今や科学的エビデンスは、医学界における最高の信頼性と評価の判断基準となりつつあります。
ところがここ10年ぐらいの間に、アメリカを中心に祈りや手かざし療法など、スピリチュアル・ヒーリングにきわめて近い療法の効果が、厳密な臨床試験によって確かめられるようになっています。もちろん現時点では、すべての研究結果が完全な治療効果を示しているわけではありませんが、厳格な臨床調査の半数以上において、その有効性が統計学的に確認されるようになっています。そしてその結果が、世界的に権威ある医学専門誌に掲載されています(*「内科学アナルズ」2000年6月6日号)。これはテレビの健康番組での体験談とは全く次元が異なり、厳密な科学的手法によって祈りや手かざし療法の有効性が確認されつつあるということで、非常に大きな意味を持っています。
今現在、祈りの治療効果を調べるために、多くの患者を対象とした無作為割付臨床試験がさまざまな機関で進行しています。ハーバード大学やコロンビア大学・デューク大学など権威ある大学の医学部が、祈りの治療効果の研究に乗り出し、効果を肯定する発表を相次いで行っています。近い将来、祈りや手かざし、そしてスピリチュアル・ヒーリングの効果が確たる医学的事実として認められる可能性も濃厚です。今後の研究の進展に大いなる期待が持たれます。