本章(第4章)のまとめとキーポイント

スピリチュアル・ヒーリングでは、「霊的エネルギー循環システム」が異常となり、全身がアンバランス・不調和に陥っている状態を“病気”と定義します。“治療”とは、その「霊的エネルギー循環システム」を阻害する原因を取り除いて、全身のバランス状態を回復させることです。

スピリチュアル・ヒーリングにおける治療を別の言葉で言い表すならば、「肉主霊従」という全身の不調和状態を「霊主肉従」の状態に戻すということになります。

エネルギーのアンバランス状態を回復する治療法には、「自己努力による方法(セルフヒーリング)」と「医者やヒーラーによる外部からの治療」という2つの方向性があります。スピリチュアル・ヒーリングでは、「自己努力(セルフヒーリング)」の重要性を主張します。

自己努力の具体的内容として、まず患者自身の唯物的考え方・生き方の改善が挙げられます。物質主義的思考は、霊的エネルギーの取り入れ口(魂の窓)を大きく制限することになります。また不安・恐れなどの感情的なストレスの除去も大切な自己努力の内容です。ストレスは「魂の窓」を閉ざし、同時に「霊的エネルギー循環システム」の流れを滞らせることになるからです。さらには霊的エネルギーを積極的に取り入れるために、瞑想・祈り・呼吸法などの実践と、食・運動・休養の正しい肉体管理が必要になります。

こうした自己努力によって、「霊的エネルギー循環システム」が正常化されるようになります。

セルフヒーリングは、理論上は最も理想的な治療形式ですが、現実にはそのとおりに実行できる人はほとんどいません。「霊的エネルギー循環システム」を自己努力によって正常化できる人はめったにいません。その最大の理由は、人間の「霊」の領域にある問題「霊性の未熟さ」と「カルマ」)を克服することが、きわめて困難だからです。

自分の価値観や人生観を変えること、ものの考え方・視点を変えることは「魂の窓」の開閉状態に大きな影響をもたらすのですが、大半の人々にとってはそれがとても難しいことなのです。世の中にさまざまな健康法が普及していても、いっこうに病気が減少しないのは、この「霊」の領域の問題を克服することができないからなのです。

スピリチュアル・ヒーリングは最も強力な生体エネルギー療法です。数ある地上の治療法や生体エネルギー療法の中で、「スピリチュアル・ヒーリング」のみが唯一、患者の「霊」を癒す力を持っています。

しかし、スピリチュアル・ヒーリングによって高次元の治療エネルギーが与えられたとしても、それを患者サイドがどこまで受けられるかによって治療効果に大きな差が生じます。最も理想的な治療は、患者の「霊・霊の心(霊的意識)・霊体・本能・肉体」という身体のすべてのレベルに治療効果が及ぶものです。これによって身体全体のバランスが回復し、調和状態に置かれます。次に「霊の心・霊体・本能・肉体」のレベルに影響力が及ぶケース、「霊体・肉体」のレベルに影響力が及ぶケース、そして「肉体」のレベルだけに影響力が及ぶケースが存在します。

このように1人のヒーラーから同じ治療エネルギーが与えられても、患者サイドの内容・条件の違いによって、十人十色の治療領域・治療レベルが形成されることになります。これを、スピリチュアル・ヒーリングの「治療領域理論」と呼びます。

「治療領域理論」で重要なことは、「治療効果」を左右する大半の要因が患者サイドにあるという点です。世間一般では、ヒーリングの治癒率はヒーラーの能力によって左右されると考えられがちですが、実際には治療結果は患者によって決定されるものなのです。またスピリチュアル・ヒーリングでは、「カルマ」による病気は、いかなる医療によっても治すことはできないことを明らかにしています。

こうした事情を考えると、スピリチュアル・ヒーリングの「治癒率」についてあれこれ言い立てることは、全く無意味なことと言わなければなりません。

スピリチュアル・ヒーリングは、肉体の病気治療より、ヒーリングを通じて患者に「霊的覚醒」をもたらすことを目的としています。患者に霊的覚醒が生じないならば、たとえ肉体の病気が治ってもそのヒーリングは失敗と見なされます。この点においてスピリチュアル・ヒーリングは、他の医療と根本的に異なっています。

インド伝統医学のヨーガの一派では、ヨーガの実践によってクンダリニーが上昇してチャクラが覚醒し、身体のエネルギー状態が高められるとします。そして身体のエネルギーレベルがアップすることによって病気が癒されると言います。しかし、こうしたヨーガの考え方は、霊的事実を誤認したものです。

スピリチュアリズムの観点からするならば、チャクラの覚醒やクンダリニーの上昇といったものは、ある霊的事実を比喩的に述べたものにすぎません。「チャクラの覚醒」とは、霊体から肉体に向けて一度に大量のエネルギーが流入すること、「クンダリニーの上昇」とは、霊体のエネルギーレベルが肉体のエネルギーレベルより大きくなって、肉体を完全にコントロールできる状態に至ること完全な「霊主肉従」状態)を意味しています。

理論として見るかぎり、ヨーガの主張するところは間違っていますが、ヨーガが掲げる具体的な実践内容(瞑想・呼吸法・アーサナ)は、スピリチュアル・ヒーリングの「霊的エネルギー循環システム」を正常化させる有効な方法となっており、実際に大きな治療効果をもたらします。

とは言っても、ヨーガの実践によって、スピリチュアル・ヒーリング(スピリット・ヒーリング)と同じような治療効果をもたらすことはできません。

ヨーガと並ぶインド伝統医学であるアーユルヴェーダも、ホリスティックなエネルギーバランス理論によって健康・病気・治療を考えます。しかし、アーユルヴェーダが対象としているのは肉体次元だけであり、霊的身体を視野に入れた理論ではありません。アーユルヴェーダの治療レベルは、ほとんどの場合、肉体次元にとどまっています。

中国伝統医学もまた、気エネルギーのバランス理論によるホリスティックな治療観を展開しています。気の流れのアンバランスを正し、気のバランスを回復することが気の医学の治療ということになります。気の医学では、複雑で緻密な治療理論を発達させてきました。中国では気の医学による治療と同時に、養生法が普及し、自己努力による治療(セルフヒーリング)が広く行きわたっています。

気の医学の治療理論はホリスティック性に富んでいますが、肉体次元に限定されているため、その治療効果は霊体・肉体レベルにとどまっています。スピリチュアル・ヒーリングやヨーガのように「霊」という頂点部からのエネルギー循環が可能ではないために、初めから治療効果には限界があります。その一方で、中国伝統医学では心身相関性を明らかにしており、「霊の心(霊的意識)」のレベルまでの治療の可能性を示唆しさしています。

ハーネマンの「ホメオパシー」とバッチの「花療法」は、しばしばホリスティック医学の中に位置づけされます。これらはホリスティックな健康観・治療観を持ち、西洋医学とは全く異なる治療を行い、現実に多くの治療実績を上げてきました。「ホメオパシー」と「花療法」は、一種のエネルギー医学と見なすことができます。

ホメオパシーと花療法の違いは、ホメオパシーが病気の根本原因を西洋医学の間違った治療にあるとしたのに対し、花療法はそれを心理的な傾向(心の世界)に求めたことです。また「レメディー」と呼ばれる彼ら独自の薬のつくり方と理論も、両者の間では全く異なっています。

いずれの療法も、現実の実績が自らの治療の正しさ・優秀性を証明するものであると主張します。しかしホメオパシーや花療法における治癒には、“自然快癒”の時期がたまたま一致していたにすぎないという可能性や、“プラシーボ”によって快癒したという可能性が考えられます。また無意識のうちに「スピリチュアル・ヒーリング」を行っていたという可能性も否定できません。