2.スピリチュアル・ヒーリングの治療観

自然治癒力を左右する「霊的エネルギー循環システム」

肉体の自然治癒力は、霊体から「霊的エネルギー」が肉体に流入し、肉体のエネルギーレベルがアップすることによって高まります。もちろん食事や運動などの物質的な条件も自然治癒力の働きに影響を及ぼしますが、先の章ですでに述べたように、生命エネルギーに転化された霊的エネルギーこそが、自然治癒力の強化に決定的な影響を与えます。言い換えれば――「霊的エネルギー循環システム」が正常に働き、霊・霊の心(霊的意識)・霊体・本能・肉体がトータル的にバランスを保って調和したとき、自然治癒力は最高に力を発揮するようになるということなのです。

一般には自然治癒力といえば、肉体だけに存在するものと考えられています。しかし自然治癒力は肉体だけでなく、霊体にも心(意識)にも存在します。霊的次元の自然治癒力があるということです。医学関係者を含め大半の人々は、病気といえば常に肉体の異常だけを問題にしますが、肉体の病気は「全身の不調和」という異常さが結果的に物質レベルに表出したものなのです。肉体を病んでいるのは、身体を構成する5つの要素が不調和状態(アンバランス状態)にあるからなのです。霊的要素と肉(物質)的要素の関係が本来の在り方から逸脱している、すなわち「肉主霊従」の状態になっているからなのです。

本来ならば肉体に一時的に異常が生じても、霊体から流入する「霊的エネルギー」が生命エネルギーとして“自然治癒力”を活性化することができるなら、病気は治癒することになります。しかし現代人の多くは、肝心な霊的エネルギーを不足させています。そのため肉体に十分なエネルギーがもたらされず、生体の維持機能が正常に働かなくなっています。霊的要素と肉的要素の関係が極端に偏って「肉主霊従」の状況に陥り、霊的要素は肉的要素の中に閉じ込められたような状態になっています。

「霊的エネルギー循環システム」に基づく、スピリチュアル・ヒーリングの「治療観」

すでに学びましたが、スピリチュアル・ヒーリングの健康観・病気観は、「霊的エネルギー循環理論」によって説明されます。宇宙に充満する霊的エネルギーが人体に取り入れられ、それが人体のすべての構成要素(霊・霊の心・霊体・本能・肉体)に行きわたって全身が調和状態に置かれるとき、健康が保たれます。病気はこれとは反対に、霊的エネルギーが取り入れられず、また霊的エネルギーがスムーズに人体をめぐらない結果、全身がアンバランス・不調和状態に陥ることです。

スピリチュアル・ヒーリングにおける“治療”とは、異常になっている「霊的エネルギー循環システム」を正常に戻すことに他なりません。霊的エネルギー循環を阻害している原因を取り除き、全身のアンバランスを正し、調和状態を取り戻すことです。全身のバランス回復によって“自然治癒力”が正常に働くようになると、病気が治ることになります。

以上が、スピリチュアル・ヒーリングの治療観の概要です。

スピリチュアル・ヒーリングの治療観
  • 霊的エネルギー循環の障害を取り除く → 「霊的エネルギー循環システム」の正常化 → 自然治癒力のアップ → 病気の治癒

これを「霊的要素」と「肉(物質)的要素」の関係で見るならば、スピリチュアル・ヒーリングとは――「肉的要素(本能・肉体)」に偏ってしまった身体状態を、外部から霊的エネルギーを注入して「霊的要素(霊・霊の心・霊体)」優位の状態にする手段ということになります。すなわちヒーラーの霊的エネルギーによって、患者を「肉主霊従」から「霊主肉従」に正すのがスピリチュアル・ヒーリングということになります。

  • 肉主霊従 → スピリチュアル・ヒーリング(霊的エネルギー注入) → 霊主肉従

「霊的エネルギー循環システム」正常化の、2つの方向性

霊的エネルギー循環を正常化することが、まさに根本的な治療法と言えますが、それには2つの方向性が考えられます。

1つは――患者本人の「自己努力」によって「霊的エネルギー循環システム」を正常化させるものです。患者が自らの努力によって「魂の窓」を開き、宇宙の霊的エネルギーを取り入れ、それを霊の心(霊的意識)・霊体・本能・肉体へとステップダウンさせることです。自力によって「肉主霊従→霊主肉従」へともっていくことです。これができれば肉体の自然治癒力はアップし、病気は癒されるようになります。いわゆる「セルフヒーリング(自己治療)」です。

もう1つは――「医者やヒーラーの助け」を借りて「霊的エネルギー循環システム」の阻害要因を取り除き、霊的エネルギーの流れを正常化させるものです。一般的に言う治療のことです。大半の患者は、医者やヒーラーの治療によって手っ取り早く病気を治してほしいと思っています。

治療の2つの方向性
  • ①自己努力で、「霊的エネルギー循環システム」の阻害要因を取り除く(セルフヒーリング)
  • ②医者やヒーラーの助けを借りて、「霊的エネルギー循環システム」の阻害要因を取り除く

「セルフヒーリング」が治療の基本

ホリスティック医学の理念に――「患者が自ら癒し、治療者はそれを援助する」という内容があります。患者の中には病気は医者が治してくれるものと思っている人がいますが、医者ができるのは本人の“自然治癒力”に対する援助だけです。病気を治すのは患者自身であり、医者はあくまでもその援助者にすぎません。

したがって治療では、医者まかせ・ヒーラーまかせは駄目で、何より「セルフヒーリング(自己治療)」という自己努力が優先されなければなりません。間違ったライフスタイルを改善して、少しでも自然治癒力を高めるような努力を患者自身がしなければなりません。

「スピリチュアル・ヒーリング」も、これと全く同じ見解に立ちます。病気の治療は、最終的には患者本人の自己努力にかかっていると考えます。病気の原因をつくり出したのは患者自身である以上、本人が自分で病気の原因を取り除こうとするのは当然のことであり、それが最も理に適っています。自分自身の努力で、自らを「肉主霊従」から「霊主肉従」の状態へと引き上げなければなりません。ヒーラーまかせの姿勢のままで、病気が根本的に治ることはありません。

仮にスピリチュアル・ヒーリングが功を奏して一時いっとき病気が治ったとしても、間違った不自然な生活を続けるかぎり、病気が再発するのは当たり前です。自分の肉体を正しく管理するのは、自分自身に対する義務なのです。

ヒーラーにとっては、頼ってくる患者が誰であってもヒーリングを拒否することは許されませんが、患者の立場としては、病気を治すのはあくまでも自分自身であるとの自覚を持ち、積極的に自己努力に励むべきなのです。

「セルフヒーリング」の本質は、「これまでの生活の根本改革」

問題は、セルフヒーリングによって霊的エネルギー循環の障害となっている原因を完全に取り除くことができるかどうかということです。

スピリチュアル・ヒーリングの健康理論に照らしたとき、「霊的エネルギー循環システム」を異常にする大きな原因は、「唯物論的なものの考え方」です。人間を「肉主霊従」に陥らせる主な原因は、「霊的なものに対する否定的な考え方」です。これらは霊的エネルギーを取り入れるという最初のステップで、根本的な障害を引き起こすことになります。

したがって自己努力としては、まずこうした「唯物的な思考を取り除くこと」を第1に目指さなければなりません。そして次に、霊的なものを土台とする新しい人生観・価値観をつくり上げるということになります。それは言い換えれば――これまでの「物質中心の考え方を根本から変える」ということです。

不安や恐れといった「心のストレス」や「マイナスの感情」を取り除くことも必要となります。これらは霊的エネルギーが「魂の窓」から流入してくるのを遮断しゃだんすると同時に、身体内部のエネルギーの流れを妨げることになるからです。

また、「霊的エネルギーを取り入れるための積極的な努力」も必要となります。瞑想や祈り・呼吸法・森林浴などを意識的に行わなければなりません。さらには「肉体に対する正しい管理」も必要となります。具体的には“菜食”を中心とした健全な食生活・適度な運動・十分な休養を心がけるということです。

「セルフヒーリング」の実践内容は、このように多岐にわたります。一口にセルフヒーリングと言っても、実際はとてもたいへんなことなのです。物質中心の考え方や間違ったライフスタイルを改め、すべてゼロからやり直すような根本改革が必要となります。それは、自分自身を「肉主霊従」から「霊主肉従」へと引き上げる徹底した「霊的自己コントロールの努力」に他なりません。

セルフヒーリングとは

「霊的エネルギー循環システム」の障害を取り除き正常化させること

(「肉主霊従」から「霊主肉従」へと引き上げる霊的自己コントロールの努力)

  • 唯物論的な考え方を捨てる
  • 霊的価値観・人生観を身につける
  • 心のストレスを取り除く
  • 瞑想・祈り・呼吸法を行う
  • 健全な食事・適度な運動・十分な休養を心がける

「セルフヒーリング」の難しさと一番の問題点

さて、この中で最も難しいのは、自分の考え方を変える、これまでの自分の価値観・人生観・世界観を変えることです。患者が真っ先にしなければならないのは――「唯物的な思考から抜け出す」ことです。唯物的思考を捨て去って霊的思考ができるようになるということは、「霊」という高次の領域へ参入することを意味します。それによって「霊主肉従(霊的コントロール)」の出発点に立つことができるようになります。人間の最も高次の部分(霊)が変化することで、初めて本当の健康への道が開かれるようになるのです。ところが、それが大半の人々にとって何よりも困難なことなのです。

「セルフヒーリング」の一番の問題点は、そこにあります。セルフヒーリングや自己コントロールの大切さを説く人々は大勢いますが、現実に完全なセルフヒーリングを実行できないのは、「霊」という最高次の部分を変えることがきわめて難しいからなのです。呼吸法や瞑想をしたり、ストレス対策としてさまざまな心理療法に取り組んだり、あるいは食事改善や運動に励むことは、その気になればそれほど難しいことではありません。現にそれらを一生懸命にやっている人々は大勢います。

しかし本当の健康を手に入れるためには、それだけでは駄目なのです。「霊」という大もとに対するアプローチが、どうしても不可欠なのです。

スピリチュアル・ヒーリングの目的

理論的には、セルフヒーリングによって病気は完全に克服できるということになりますが、現実にはなかなかその通りにはいきません。患者自身に「霊的向上・霊的覚醒」がもたらされないかぎり、真の治療は実現しません。

スピリチュアル・ヒーリングの最終目的は、患者にそうした「霊的な変化」を引き起こし、「霊的エネルギー循環システム」を正常化させることです。患者本人の自己努力だけでは実現不可能な人間の最も深い部分(霊・霊の心)に対する変化のきっかけを、外部からヒーラーを通じてもたらそうとするものです。そして、これこそが根本的な治療を実現することになります。食事や運動や心理学的なストレス対策も確かに大切ですが、霊的世界を含めた広い考え方(価値観・人生観)は、それとは比較にならないほど大きな影響力を持っています。