1.スピリチュアル・ヒーリングの「霊的要素」と「総合的な医学理論」

霊的要素を含む身体観

医学が対象とするものは人間の身体ですが、スピリチュアル・ヒーリングの身体観は、他の医学・治療法とは全く異なっています。スピリチュアル・ヒーリングの身体観は、霊的観点に立って論じられます。

スピリチュアル・ヒーリングでは、人間は「霊・心(精神)・身体という三位一体の存在」と定義されます。身体には、目に見える肉体とは別に、目に見えない「霊的身体(霊体)」があるとします。スピリチュアル・ヒーリングは、この不可視の霊体を、肉体と同様に医学の対象とするのです。ここにスピリチュアル・ヒーリングの大きな特徴があります。

「霊的エネルギー」と「霊的エネルギー循環理論」

本書では、「霊的エネルギー」と「霊的エネルギー循環システム」をキーワードにして健康観・病気観・治療観を明らかにしました。「霊的エネルギー」は、人体の最高次元の構成要素である「霊」から取り入れられ、そこからステップダウンして身体のすべてを循環し、各構成要素を活性化します。この霊的エネルギーの循環が正常であれば、身体はトータル的にバランスがとれ調和を保つことになります。これが“健康”の状態です。

“病気”は、全身の霊的エネルギーが欠乏し、エネルギーの循環がスムーズでなくなった状態のことです。一般に病気とは肉体に現れる異常のみを指しますが、本当は全身のアンバランス状態・不調和状態のことなのです。肉体次元の異常に先立って、霊・心(精神)・霊体の各レベルにおいて、すでに病気は発生しているのです。そのため“治療”とは、アンバランスに陥った霊的エネルギーの循環を正常化し、全身のバランスを回復させるということになります。

このように霊的エネルギーの循環によって、健康・病気・治療に対するホリスティックな理解が可能となります。本書ではこれを――「霊的エネルギー循環理論」と呼んでいます。

中国の気の医学もエネルギーバランス理論に立っていますが、霊体の存在を前提としない理論には大きな欠陥と限界があります。スピリチュアル・ヒーリングの「霊的エネルギー循環理論」は、ホリスティック医学の総合医学理論として、ホリスティック医学の中に取り入れられるべきものです。

患者の治療エネルギーの受容能力と「治療領域理論」

スピリチュアル・ヒーリングに代表される“生体エネルギー療法”では、現実の治療結果は、患者サイドの治療エネルギーの受容能力によって大きく決定されます。患者側の受容条件によって治療エネルギーは、霊レベル・心(意識)レベル・霊体レベル・肉体レベルのいずれかの領域に及ぶことになります。これを―― 「治療領域理論」と呼びます。

この理論は、「同じヒーラーの治療を受けても、なぜ治る患者と治らない患者がいるのか?」「同じヒーラーにかかっても、どうして治療結果が1人1人異なるのか?」という疑問に対する答えとなっています。とかく治療の世界では、医師や治療師サイドの力量のみが問題にされますが、現実の治療結果を左右する要因は、患者サイドにあるということなのです。

この理論は、スピリチュアル・ヒーリングや生体エネルギー療法ばかりでなく、他の医療全般にも適用できます。その意味でこの理論は、まさに医療・治療に関するホリスティックな医学理論と言えます。

「治療エネルギー理論」と、3種類のスピリチュアル・ヒーリング

本書では、世間一般で“生体エネルギー療法”と言われているものを総称して、広義のスピリチュアル・ヒーリングと呼んでいます。そのスピリチュアル・ヒーリング(生体エネルギー療法)の治療効果は、ヒーラーサイドの内容によっても左右されます。ヒーラーが異なると治療効果に変化が生じることは経験的に認められます。本書ではその根拠を、「霊的エネルギー循環理論」に基づいて明らかにしています。

スピリチュアル・ヒーリングでは、ヒーラーから発せられた治療エネルギーが患者の病気を癒すことになりますが、この「治療エネルギー」には3種類あります。このエネルギーの違いによって、治療効果・治療結果に大きな差が生じることになります。これを――「治療エネルギー理論」と言います。

1つ目の治療エネルギーは、霊界にいる医者「霊医」と言う)から発せられるもので、「スピリット・エネルギー」と言います。そのエネルギーが地上のヒーラーを媒介として患者に与えられます。この治療エネルギーは、スピリチュアル・ヒーリング(生体エネルギー療法)の中でも、最も霊的純度が高く、患者の霊の領域にまで流入することができます。スピリット・エネルギーは「霊的エネルギー循環システム」を最高位から正常化する可能性を持っているため、最大の治療効果が期待できます。この「霊医」の霊的エネルギーを用いたヒーリングを――「スピリット・ヒーリング」と呼びます。

2つ目の治療エネルギーは、地上のヒーラーの霊体に内在するエネルギーで、「サイキック・エネルギー」と言います。生体エネルギー療法ではよく、このサイキック・エネルギーが患者に投射され治療が行われます。これを――「サイキック・ヒーリング」と言います。サイキック・ヒーリングでは「霊的エネルギー循環システム」の一部分が正常化され、時に奇跡的な治癒が生じることがあります。しかしその治療領域は、あくまでも部分的なレベルにとどまっているため、根本的な治癒の可能性は初めから期待できません。多くの場合、病気がぶり返すようになります。

3つ目の治療エネルギーは、ヒーラーの「肉体エネルギー(生体磁気エネルギー)」です。このエネルギーを患者に与える治療を――「マグネティック・ヒーリング」と言います。この場合は、物質的なエネルギーを患者に与えるだけなので、治療領域も治療効果も限定され、先のサイキック・ヒーリングに比べ、さらに低いレベルにとどまることになります。

スピリチュアル・ヒーリングは、このようにヒーラーが用いるエネルギーによって、「スピリット・ヒーリング」「サイキック・ヒーリング」「マグネティック・ヒーリング」の3つに分類されます。スピリチュアリズムでは、「スピリット・ヒーリング」だけを本当のスピリチュアル・ヒーリングと見なしています。

スピリット・ヒーリングの特殊性

「霊医」の存在

スピリット・ヒーリングは、世界中で最も特殊な医療と言えますが、それはきわめて具体的な「霊魂観」に立脚しているからです。死後の世界である霊界に、地上の医者のような存在(霊医)がいて地上の患者の治療に当たります。これは大半の人々にとっては驚き以外の何物でもありません。しかしスピリット・ヒーリングに携わるヒーラーたちは、いずれも霊界の医者の存在が事実であることを確信しています。

「霊医による治療」という一般人の常識を超えた見解は、現実の“奇跡的治癒”という結果によって、それが決して空想ではないことを証明しています。スピリット・ヒーリングによる数々の奇跡的治癒は、それが「最強の生体エネルギー療法」であることを示しています。

スピリット・ヒーリング成立の条件と、「スピリット・ヒーラー理論」

あるヒーラーの治療が、先に挙げた3種類のスピリチュアル・ヒーリングのうち、どの治療法に相当するのかは、ヒーラーの用いる治療エネルギーによって決定されます。ある者は「スピリット・ヒーリング」、ある者は「サイキック・ヒーリング」、またある者は「マグネティック・ヒーリング」を行うようになります。

ヒーラーならば最も効果の高い「スピリット・ヒーリング」を願うのが当然ですが、それは霊医の協力・働きかけがあって初めて可能となります。問題となるのは、地上のヒーラーが霊医を引き寄せ、協力してもらえるだけの内容・資格を持っているかどうかということです。

霊医の対象となって「スピリット・ヒーリング」をするには、単に霊的能力を持っているだけでは駄目で、内面性の高さが要求されます。霊医と同じような純粋な奉仕性・利他性・高貴な人格性・霊性が必要とされます。またヒーラーが日常生活において「霊主肉従」の努力を継続し、清らかで節度ある生き方をしているかどうかということも重要な条件となります。ヒーラー本人が、どれほど「スピリット・ヒーリングをしたい!」と切望しても、それにふさわしい人格的・霊的内容がともなっていなければ不可能ということなのです。本書ではこれを――「スピリット・ヒーラー理論」と呼びます。

この理論に世間一般のスピリチュアル・ヒーラーを照らしてみると、その大半がサイキック・ヒーリングかマグネティック・ヒーリングのレベルにとどまっていることが分かります。

一方、気功師などが自分はスピリチュアル・ヒーラーではないと思っていても、その人間の人格性・霊性が優れているときには、いつの間にか霊医からの働きかけを受けていることがあります。本人が知らないうちに「スピリット・ヒーリング」をしていることもあるのです。

スピリット・ヒーリングは「最強の心身医学」

心身医学は、現時点でのホリスティック医学の中心的存在と言えます。心身医学は、心と身体の関係を医学的に立証することで“唯物医学”に大きな打撃を与えました。しかし現在の心身医学は、肝心な「心」そのものが何であるのかが分かっていません。

スピリチュアル・ヒーリングは、肉体(脳)から独立した心(精神)の存在を主張します。また、これまでの宗教では「霊」と「心」の区別は明確ではありませんでしたが、スピリチュアル・ヒーリングでは「霊」と「(霊の)心」が別の存在であり、「霊の心」は「霊」の道具、「霊」の表現形態であることを明らかにしています。

現在の心身医学では、さまざまな心理学的方法を用いて心因性の障害を治療しようとしていますが、いまだに心の力のメカニズムを十分理解することができずにいます。スピリチュアル・ヒーリングの「霊的エネルギー循環理論」によるならば“心の力”とは――「心(意識)レベルからの霊的エネルギーのステップダウンによる影響力」ということになります。意識レベルのエネルギーが、下位の霊体と肉体に流されることによって、霊体と肉体レベルのアンバランスが正されることになります。

しかし心身医学による方法では、完全に心(意識)レベルを充電・活性化することができないために、全身の霊的エネルギー循環のアンバランスを正すまでには至りません。それができるのは、唯一「スピリット・ヒーリング」だけなのです。「スピリット・ヒーリング」は、心(意識)レベルを完全に充電・活性化する可能性を持っています。その意味でスピリット・ヒーリングは、最も強力な心身医学と言えます。とは言っても、患者サイドの受容性が現実の治療結果を決定することになります――「治療領域理論」)

以上が、本書で明らかにしたスピリチュアル・ヒーリングの総合医学理論のポイントです。