(3)除霊治療
最も歴史の長いスピリット・ヒーリング
最も歴史の長いヒーリング
霊の憑依によって、ある種の精神病が引き起こされることが知られています。古来、多くの宗教やシャーマニズムでは、憑依した霊を取り除いて病気を治そうとしてきました。これを「除霊治療」と言います(*除霊治療は「浄霊治療」と呼ばれることもあります)。
歴史的には、イエスの除霊治療がよく知られていますが、21世紀の現在でも世界各地で除霊治療が行われています。先進国である日本においても、新興宗教を中心に除霊治療が盛んに行われています。
“未熟霊・低級霊”が霊媒体質者のオーラに取り憑く
憑依のメカニズム
憑依現象の被害者となる人間には、「霊媒体質」という共通点があります。「霊媒体質」とは、霊体や肉体から普通の人よりも多くのエネルギー(*一般的に言われる“オーラ”のこと)を発散している身体的傾向のことです。
こうした“オーラ”を大量に放射している霊媒体質者には、誘蛾灯に虫が引き寄せられるように多くの“未熟霊・低級霊”が集まってきます。霊たちにとってオーラは、遠方からでも“光源”のように映り、それに接触することで霊界での苦しみが一時的に癒されるのです。
オーラに集まってきた未熟霊・低級霊が、クモの巣に虫が絡みつくようにオーラの網の中に取り込まれ、出られなくなってしまうことがあります。これが「憑依」という厄介な現象です(*憑依する霊は1人とは限りません。何人もの霊が取り憑くこともあります)。霊に憑依された地上人は、意識の一部、あるいは意識のすべてを乗っ取られたような状態に陥り、統合失調症や二重人格・多重人格の症状が現れるようになります。
憑依は時に、何年も何十年も続くことがあります。霊媒体質者であってもオーラが澄みきっていて質が高ければ、低級霊を引き寄せたり、オーラの中に入り込まれるようなことはありません。しかし、大半の霊媒体質者のオーラは質が悪く黒ずんで濁っているため、「憑依現象」を引き起こしてしまうのです。
カルマと憑依との関係
憑依の加害者である未熟霊であれ、憑依の被害者である地上の患者(霊媒体質者)であれ、そこには「霊性」と「カルマ」という問題が深く関わっています。
憑依の加害者となってしまう“未熟霊”は、自分の死を自覚できないほど「霊的無知」の状態にあり、霊性も低いのが普通です。死後も、依然として地上に住んでいると思い込んでいるため(地縛霊になっているため)、霊媒体質者のオーラの中に閉じ込められ、抜け出せなくなってしまうのです。そして憑依という「神の摂理」に反した行為の当事者となり、新たなカルマをつくり出すことになってしまいます。地上人のオーラの中に閉じ込められることは、憑依霊にとっても苦痛でしかなく、その苦しみによってカルマの一部が清算されることになります。
一方、憑依の被害者となる地上の「霊媒体質者」も、霊的真理を知らず、肉体本能に翻弄された生活をしています。そのため醜悪なオーラを放射し、未熟霊に憑依されてしまいます。憑依の被害者となって大きな苦しみを味わうようになるのは、前世でつくった「カルマ」があるからです。肉体の病気と同じで、憑依の苦しみを通してカルマが清算されるようになっているのです。
ほとんど成功しない「除霊治療」
除霊治療では普通、ヒーラーが患者に手をかざしたり、患者の体に触れてエネルギーを送り込み、憑依霊に衝撃を与えて患者から離れさせます。また、別の霊媒体質者にいったん憑依霊を乗り移らせ、霊を説得して患者から離れさせるといった方法が取られることもあります。それによって憑依霊が患者から離れると、その瞬間に精神病は治ります。
しかし実際には、憑依霊はオーラの中に閉じ込められたような状態になっているため、なかなかそこから抜け出すことができません。一度は離れても、しばらくするとまた戻ってきて憑依が再発するようになります。別の霊が代わって憑依することも多く、除霊治療が完治をもたらすようなことはほとんどありません。
憑依による精神病も他の病気と同じく、本人の「カルマ」が深く関わっており、カルマが清算されないうちは憑依の問題は解決しないようになっています。「神の摂理」によって、本人や家族の霊的成長のために必要な苦しみの体験として憑依が引き起こされている場合には、いかなる方法をもってしても精神病を完治させることはできません。
2種類の除霊治療
憑依霊を患者のオーラから解き放つために、患者に向けて霊的エネルギーを投射しますが、その治療エネルギーには2種類あります。1つは霊医がつくり出す「スピリット・エネルギー」、もう1つはヒーラーの霊体にある「サイキック・エネルギー」です。したがって「除霊治療」には、2種類あることになります。スピリット・エネルギーを用いる「スピリット・ヒーリング」としての除霊治療と、サイキック・エネルギーを用いる「サイキック・ヒーリング」としての除霊治療です。治療効果は言うまでもなく、スピリット・ヒーリングの方が優れています。
“霊を引き離す”というだけのことなら、サイキック・ヒーリングでも可能です。しかしサイキック・ヒーリングでは、引き離された憑依霊に対するアフターケアがなされないため、再び憑依が発生するようになります。日本の新興宗教に見られる除霊治療のほとんどは、サイキック・ヒーリングです。また、シャーマニズムにおける呪術治療による除霊も、密教などの加持祈祷による除霊も、同じくサイキック・ヒーリングです。そのため一時的には憑依状態が解消したように見えても、時間を置いて再発することになります。
それに対して「スピリット・ヒーリング」による除霊治療が成功したときには、決してぶり返すようなことはありません。霊医が進めるスピリット・ヒーリングでは、患者に内在するさまざまな霊的原因を解決する方向に働きかけがなされます。それと同時に憑依霊に対してもアフターケアを通して啓蒙(死を自覚させること)が行われるため、憑依霊自身も救われることになります。もちろんこうした除霊治療が成功するためには、「患者のカルマが清算されている」ということが大前提となります。
ウィックランドの除霊治療
代表的なスピリット・ヒーリングとしての除霊治療
スピリチュアリズムの歴史の中で最も有名な除霊治療は、アメリカの精神科医師、C.A.ウィックランドによって行われたものです。これは、スピリット・ヒーリングとしての除霊治療が最も成功した例と言えます。
ウィックランド博士は、30年もの間、霊界の医者と協力して多くの精神病患者の治療にあたり、驚異的な治癒率をあげました。こうしたウィックランド博士の除霊治療については、彼の著書『迷える霊との対話(Thirty Years Among the Dead)』(近藤千雄訳・ハート出版)の中で詳しく述べられています。