1.身体観をめぐる問題

医学や治療は人間の身体を対象とする以上、当然のこととして人間の身体を理解するところから出発しなければなりません。現代西洋医学は、人間を単なる肉体という物質次元の存在と考えます。物質的な身体以外の存在を認めようとしません。そして物質である肉体の構造や機能を分析的に明らかにしようとします。こうした西洋医学の本質を一言で言えば“唯物医学”ということになります。

それに対してホリスティック医学は、人間は単なる物質だけの存在ではなく、物質的身体(肉体)以外の内容を併せ持つ存在であると主張します。その際、肉体以外のものとして、心や意識、何らかの霊的なるものが考えられます。

現在のホリスティック医学では、「人間とは、霊性・精神性・身体性という3次元にわたるトータル的存在である」とのコンセンサスが一応確立されています。しかし「霊性」とか「霊的なるもの」が具体的に何を意味するのかは、いまだに明確ではありません。霊とか霊性という言葉は、人それぞれの思うところにしたがって勝手に用いられているのが実情です。現在のホリスティック医学の一番の問題点は  「霊を含めた身体観に対する明瞭な認識・見解がない」ということなのです。

霊的なるものは、まず身体観において明確にされなければなりません。物質的身体(肉体)以外の身体が果たして存在するのかどうか、従来の宗教で指摘されてきた「霊的身体」なるものが実際に存在するのかどうかを明らかにしなければなりません。

本章では、初めにスピリチュアル・ヒーリングの身体観を取り上げ、その後で現在の代表的な代替医学であるインド伝統医学や中国伝統医学の身体観、さらには神智学しんちがくにおける身体観と比較します。そうした比較を通じて、スピリチュアル・ヒーリングの身体観の独自性と卓越性を明らかにします。