4.本書の目的と構成

本書の目的

本書は、現在最も霊的要素の豊富な医学・治療法と思われる「スピリチュアル・ヒーリング」の分析を通じて、現在のホリスティック医学が明確にし得ないでいる「霊的なるもの」「霊性」といった霊的要素の概念を明らかにし、ホリスティック医学の中における「霊の問題」の解決の方向性を示そうというものです。それによってホリスティック医学の総合的な医学理論ならびに新しい医学モデルを提示します。

さて、そのスピリチュアル・ヒーリングですが、現在までにまとまった理論体系が確立しているわけではありません。スピリチュアリズムの情報の中で、断片的に健康観・病気観・治療観が述べられていたり(注2)、ハリー・エドワーズなどのヒーラーによってその考え方や経験が述べられていますが、1つの医学理論体系として整理されているわけではありません。

本書は、これまでスピリチュアリズムの中で与えられた情報を整理し、理論体系化を試みます。その意味でスピリチュアリズムとスピリチュアル・ヒーリングにとっても、本書は大きな意義を持つものと考えます。本書によるスピリチュアル・ヒーリングの体系化の試みが、ホリスティック医学とスピリチュアル・ヒーリング双方に対する貢献になることを願って本書を執筆しました。スピリチュアル・ヒーリングがホリスティック医学の将来に明確な方向性を示し、具体的にホリスティック医学の進歩につながることを念頭において執筆しました。

さらに、スピリチュアル・ヒーリングが「生体エネルギー医学」として、理論的にも実践的にも、また現実の治療効果においても最も卓越しているものであることを証明することも本書の目的の1つとなっています。

本書の構成について

本書は、序(はじめに)を含めて9つの章から構成されています。第1章では、本書の中心テーマであるスピリチュアル・ヒーリングの歴史的・思想的背景を概観します。

第2章では、スピリチュアル・ヒーリングの「身体観」を取り上げます。スピリチュアル・ヒーリングでは、「霊的身体(霊体)」という特異な身体の存在を前提とします。それはまさに“唯物医学”にはないスピリチュアル・ヒーリング独自の霊的要素と言えますが、そのスピリチュアル・ヒーリングの霊的身体観を、他の代替医療である中国伝統医学や古代インド思想(ヨーガ)の身体観、さらに神智学しんちがくとリチャード・ガーバーのバイブレーショナル・メディスンの身体観などと比較します。そうした比較対照を通じて、スピリチュアリル・ヒーリングの身体観の卓越性を明らかにします。

第3章では、スピリチュアル・ヒーリングの「霊的エネルギー循環理論」に基づく「健康観」と「病気観」を取り上げます。スピリチュアル・ヒーリングの健康観・病気観を、「霊的エネルギー」という霊的要素をキーワードにしてホリスティックに明らかにしています。また、そのスピリチュアル・ヒーリングの医学的な見解を、中国伝統医学や古代インド宗教などの健康観・病気観と比較します。

第4章では、「霊的エネルギー循環理論」に基づくスピリチュアル・ヒーリングの「治療観」を見ていきます。ここでも中国伝統医学や古代インド宗教との比較を通じて、スピリチュアル・ヒーリングの治療観のホリスティック性と特異性を浮き彫りにします。

第5章では、スピリチュアル・ヒーリングのヒーラーに関する問題を取り上げます。ヒーリングの治療効果を、ヒーラーサイドの諸条件から分析し、またヒーラーが使用する治療エネルギーの違いによって、スピリチュアル・ヒーリングを3つに分類します。さらにこの章では、スピリチュアル・ヒーリングの中で最も特殊な「霊界の医師による治療(スピリット・ヒーリング)」の問題を集中的に取り上げます。この常識的には理解しがたい特殊な治療法は、純粋な宗教的テーマである“霊魂説”を最も具体化した形で医学の中に持ち込みます。外部の霊的存在が治療に関わるという、これまで人類の中で全く知られることがなかった大きな問題を取り上げ、それがホリスティック医学の中にどのような意味をもたらすのかを明らかにします。

第6章では、「心」と「心の病気」に関する問題を取り上げます。心の肉体への影響をめぐって、心身医学は唯物医学に打撃を与えました。現在の心身医学には「心」それ自体についての明確な定義がありません。まして「霊」については、ほとんど明らかにされていません。この章では、心身医学が明らかにし得ないでいる「心」と「霊」について、スピリチュアル・ヒーリングの見解を示します。さらに「心の病気(精神障害)」に対する現在の精神医学・心身医学の治療を検討し、スピリチュアル・ヒーリングの「心の病気」に対する見解と治療観を明らかにします。

第7章では、心の病気(精神障害)の代表格である“統合失調症”について取り上げます。この病気に対する現代医学とスピリチュアル・ヒーリングの見解の違いを明らかにします。スピリチュアル・ヒーリングでは、統合失調症は霊の憑依ひょういが原因であるとし、治療法の1つとして従来から宗教が行ってきた「除霊」に効果を認めます。そこに宗教と医学の一致点があると考えます。しかし、この見解は現時点の唯物医学にとっては、最も受け入れがたいものです。こうした統合失調症をめぐる問題をトータル的に取り上げ、スピリチュアル・ヒーリングによる統合失調症の治療観を提示します。

本書は、こうした構成から成っています。